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VTuberファンのサイフは強い?1,555件の回答で検証 (SCOP コラム)

VTuberファンのサイフは強い?1,555件の回答で検証 (SCOP コラム)

こんにちは。引き続きSCOP コラムの第4話です。今回はライブ配信をしている人(= ストリーマー)とその視聴者ついて得られた結果を共有いたします。特に可処分所得、つまり視聴者のいわゆるサイフ事情に関して申し上げます。

■ 背景

ライブ配信やインターネットメディアを分析する際、ゲームタイトルやコンテンツ・ジャンルで分析がされることが多いです。例えば「PCゲームのファンは金払いが良い」や「FPSは女性ファンが多い」といった表現が見られます。
 一方で、SCOPは個人の自己実現を加速するサービスです。常に個人ストリーマーについて考えています。ゲームタイトルやジャンルではなく人間について注目して分析したいです。
 たとえば、「VTuberのファンはお金を払う」と言われますが、それはどのくらい実態があるのでしょうか?上場している事務所の資料を見て分析することは誰にでも可能ですが、全てのVTuberが超大手事務所に所属しているわけではありません。VTuberはライブ配信だけでも日本に数万人がアクティブに活動していると言われ、一方で超大手事務所に所属している人数は数百人ほどです。むしろ、よくネット上の議論で具体例に挙げられるVTuberやそのファンの実態はごく一部の例外と捉えてもおかしくはありません。
 いわゆる個人で活動するVTuberや実写で活動している方々の視聴者にはどのような特徴があるでしょうか?

■ 手法

私たちはゲームカテゴリーでライブ配信を行っている側(=ストリーマー)の形式と、視聴者の属性とにどのような関係があるかを調べるため、ライブ配信を用いたアンケート調査を行いました。

今回の調査は、ストリーマーの視聴者を対象としたオンラインアンケートで実施しました。その方式は以下です:

  • 場所:Twitch上で活動する国内ストリーマー計168名のライブ配信チャンネル上
  • 調査票:SCOP方式の広告を用いてライブ配信ページ上に提示
  • 視聴者が自発的に参加するオプトイン方式
  • アンケート項目内容:視聴者の性別・年齢・職業・居住地域・1か月に趣味へ使う金額・好きなゲームジャンル など
  • 期間:2025年12月22日から2026年1月5日まで

参加した168名はいずれもSCOPに参加しているストリーマーです。その結果、視聴者から合計1,555件の有効回答を得ました。

今回はストリーマーを次の3種類の属性・形式に分けました。これを〈配信形式〉と呼びます。その内訳は以下です:

  • VTuber :101 チャンネル
  • 顔出し実写ストリーマー : 46 チャンネル
  • その他 : 21チャンネル (= つまり、カメラ映像やVTuberの姿が一切ないチャンネル。いわゆるPNGTuberなどはこちらに含まれます。)

また、参加ストリーマーの性別は以下でした:

  • 男性が69名
  • 女性が95名
  • その他が4名

■ 回答者の構成

回答者1,555名の性別構成は、

  • 男性82.7%
  • 女性12.3%
  • 回答しない3.2%
  • その他1.9%

でした。

年齢分布は、

  • 25〜29歳:16.8%
  • 30〜34歳:22.4%
  • 35〜39歳:19.0%
  • 40〜44歳:15.1%

でした。全体として20代後半から40代前半の男性が中心の調査結果です。

■ 配信形式と視聴者年齢

ここからは一歩踏み込んで、配信形式と視聴者年齢層について検討します。以下は3形式ごとに視聴者の年代構成を示したグラフです。

  • VTuber群:30〜34歳 26.7%、35〜39歳 20.9%、40〜44歳 17.2%
  • 顔出し実写群:30〜34歳 18.3%、25〜29歳 17.0%、35〜39歳 16.7%
  • その他群:30〜34歳 20.5%、35〜39歳 20.5%、40〜44歳 18.9%

「顔出し実写ストリーマー」の視聴者年齢が最も分散していると言えます。

 ライブ配信産業では単に「視聴者年齢が若い」と一括りにされがちです。しかし、実態としては「顔出しかそれ以外か」で年代が異なります。

次に、ストリーマー本人の年代と視聴者の年代を検討します。以下のグラフは、ストリーマーの年代ごとに視聴者の年代構成を示したものです。

  • 20代ストリーマー:30代 38.9%、20代 30.2%、40代 17.8%
  • 30代ストリーマー:30代 45.8%
  • 40代ストリーマーで:30代 45.1%、40代 38.0%

全体として「ライブ配信の視聴者は30代が中心」と抽象化することも可能な分布ではあります。ただし、40代ストリーマーでは40代視聴者の比率も高いです。ライブ配信文化は漠然と、発信する側の年齢が上がると視聴者の年齢も上がる傾向があると言えます。

※なお、10代と50代以上のストリーマーは回答件数が少ないため、年代間の違いはあくまで傾向として見る必要があります。

■ 趣味に使う金額

つづいて今回のメインディッシュである「1か月で趣味に使う金額」を見ます。配信形式ごとに視聴者が「1か月で趣味に使う金額」をたずねました。これを棒グラフに起こしたものが以下です。

  • 3群とも最も多かった回答は「1万円以上3万円未満」。(VTuber群では39.8%、顔出し実写群では39.5%、その他群では30.7%)
  • 月1万円未満の回答者はそれに次ぐ(VTuber群34.7%、顔出し実写群37.4%、その他群51.2%)
  • 月3万円以上を趣味に使う回答者は少数派。(VTuber群25.6%、顔出し実写群23.1%、その他群18.1%)

この結果だけを見ると、〈VTuber群〉では趣味に使う金額が高い回答者の比率がやや高く、〈その他群〉(= VTuberでも顔出しでもない)では使う金額が低い回答者が多い傾向があります。

ではこの結果から「配信形式によって購買力が違う」とまで言えるでしょうか?果たして最初の疑問である「VTuber の視聴者はサイフが強い」と言えるでしょうか?これを検討するために統計検定を用いました。馴染みが無い方は次の章『議論』に移って、結論をご覧いただければ大丈夫です。

まず回答者1,555件を用いて〈VTuber群〉〈顔出し実写群〉〈その他群〉の3群全体で、月間趣味支出の分布を比較しました。その結果、3群のどこかに差があることが確認されました(χ²検定、p=0.031)。ただし、差の大きさを示す効果量はCramér’s V=0.085であり、大きな差ではありませんでした。
 この検定だけではどの群とどの群が異なるかまでは分かりません。そこで3通りの組合せを個別に比較し、比較回数が増える影響をHolm法で補正しました。その結果、統計的に明確な差が確認されたのは〈VTuber群〉と〈その他群〉の組合せだけでした(補正後p=0.014)。〈その他群〉では、〈VTuber群〉よりも趣味に使う金額が低い方向へ分布していたと言えます。
 つづいて、〈VTuber群〉と〈顔出し実写群〉を詳しく比較しました。両者は上の棒グラフを見ても比較的似ています。月間趣味支出の7つの金額帯全体では、両群の間に統計的に明確な差は確認されませんでした(χ²検定、p=0.154、Cramér’s V=0.081)。今回の調査範囲では、両群の視聴者が趣味に使う金額の傾向は比較的近いと考えられます。(両群が完全に同じであることを証明するものではありません。)

しかし、ここで改めて検討せねばならない事項があります。チャンネルごとに回答数に偏りがあるため、それを正規化して比較する必要があるという点です。そこで回答をチャンネルごとにまとめ、各チャンネルの平均的な支出金額帯を計算しました。このチャンネル単位の値を3群で比較するKruskal–Wallis検定を行ったところ、支出額の高低にはある程度の傾向が見られたものの、統計的に明確な差には至りませんでした(H=4.83、p=0.090)。
 つまり今回の結果をチャンネルごとに正規化すると、〈VTuber群〉〈顔出し実写群〉〈その他群〉の間にはある程度サイフに差があるけれども、そこまで大きな差とは言えないということになります。

■ 議論

今回の調査では、回答者単位の比較において、配信形式と月間趣味支出の分布に小さな違いが見られました。 具体的には、〈VTuber群〉と〈その他群〉の間では、月間趣味支出の分布に統計的に明確な差が確認されました。〈VTuber群〉では、〈その他群〉よりも高い支出帯を選んだ回答者の割合が大きい傾向にありました。 一方、〈VTuber群〉と〈顔出し実写群〉の間では、〈VTuber群〉のほうがやや高い支出帯を選ぶ傾向が見られたものの、統計的に明確な差は確認されませんでした。

※今回尋ねたのは「所得」ではなく「趣味に使う金額」であることに注意してください。

今回の調査は、超大型事務所に所属するわけではない、在野で一般的なチャンネルから幅広く回答が得られました。ライブ配信で活動する多くの方々に、自分ごととして応用できる結果が得られたと思います。

一方で今回の調査から、何か企画・広告を考える企業にとっては、ストリーマーと視聴者の関係は単純な視聴者数だけでは捉えきれないことが分かります。同じ「ゲームライブ配信」というメディアであっても、〈VTuber〉〈顔出し実写ストリーマー〉〈その他〉では、視聴者の性別・年齢・趣味に使う金額 にある程度の違いがあります。
 そのため企業がライブ配信を用いたプロモーションを考える際には、チャンネルの規模だけでなく、視聴者の特徴を見ることが重要です。

■ さいごに

この結果を受けて、自分がライブ配信をする側であれば、一見すると「ならばVTuberや顔出し実写勢になるべきなんだ!その方が視聴者がお金を使ってくれるから!」という結論に飛びつきたくなると思います。特にいま既に活動されている方で〈その他〉に当てはまる方はそう思いたくなるはずです。
 我々の見解は逆です。ライブ配信を行う者は、まず自分の活動したいスタイルがあるものです。「稼げるからVTuberになるべき」という方向で動機を持ってくるべきではありません。むしろ、VTuberや顔出しストリーマーと、それ以外とでどこに差があるのか・その原因は何なのかを考えたいです。その原因が分かったとき、自分のスタイルを変えることなく活動手法を変更する範囲で最適なライブ配信を提供できるはずです。
 例えば「表情が見えづらい」といった違いがあるでしょう。ならば、カメラやガワを使っていない人は、何かしらの手段で感情・表情といったものを視聴者と共有したほうが良いことが推測できます。このあたりは更に調査が必要で、新たな研究が待たれます。
 ただこれもお金を稼ぐために表情を見せるというよりは、「視聴者と楽しい空間を作るため」といった動機でやるべきだと我々の立場では考えています。

■ SCOPコラムとは

今回からのコラムはSCOP運営から情報発信する一環です。SCOPがどのような理念の上にあるのか、それを裏付ける証拠は何なのか等を発信したいと思い、今回から筆を執ります。特に世の中に在る問題を解決し、多くのライブ配信クリエイター:つまりストリーマーを助けるものを届けたいと考えています。



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