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SCOP コラム:第二話 ライブ配信ピークタイム

SCOP コラム:第二話 ライブ配信ピークタイム

前回に引き続き、SCOP コラムの第二話です。今回は「ライブ配信にピークタイムはあるのか?」という質問に関して申し上げます。


■ 背景

SCOPの運営は配信技研という会社であり、ライブ配信のデータを扱っています。すると「ライブ配信は時期・時間によって視聴者数が変動するのか?」「ライブ配信にピークタイムはあるのか?」という質問を常々いただきます。
 SCOPは個人の自己実現を加速するサービスです。ライブ配信を行う個人クリエイター:ストリーマーの方々からはよくライブ配信の波について質問をされます。一年でどの時期に視聴者数が多いでしょう?夏休みや通称ゴールデンウィーク(= GW)には視聴者数が多くなるでしょうか?こうした波は、ストリーマーには全く関係のないところで起きる天の勢いです。折角ライブ配信活動をされるならば、やはり効果的に行いたいというのは人間として自然だと思います。
 今回は時期と時間でライブ配信の視聴傾向が果たして在るのかどうかを調べました。

■ 時期

まずは時期ごとに日本でライブ配信の視聴傾向があるかを調べるため、国内ゲーム実況ライブ配信の視聴時間データを日ごとに取得しました。その手法が以下です:

  • 対象ライブ配信サービス:Twitch, YouTube Live
  • 取得コンテンツ:ゲームカテゴリ, 日本語
  • 単位:視聴時間 [分] / 日 ※今回の単位は全てこちらに統一します
  • 期間:2022年1月1日〜2025年12月31日(4年間)
  • 取得方法:Giken Access

このデータを週ごとに区分し、年ごとにプロットしたものが以下のグラフです:

[国内ゲームカテゴリライブ配信視聴時間と年間の推移]


ご覧の通り、時期によって視聴時間には偏りがあることが分かります。簡単に言えば、ストリーマーにとって視聴者が増えやすい時期は存在するということです。これを基に、以下時期に関する分析を行います。
 参考までに、日毎の平均視聴時間を土日(祝日除く)・祝日・平日の3種類に分けて計算しました。その結果は以下です:

  • 土日 | 477.05 M
  • 祝日 | 464.25 M
  • 平日 | 372.26 M

※凡例:M は million = 100万

月

では、月ごとに区分してみます。対象期間で各月の平均視聴時間を求め、更に1日あたり平均をとると以下のようになりました。簡単に申しますと、各月の視聴時間ランキング(日割)です:

  • 月 | 平均視聴時間/日 [分]
  • 8月 | 423.92M
  • 12月 | 423.26M
  • 6月 | 414.50M
  • 9月 | 411.27M
  • 2月 | 410.27M
  • 7月 | 408.51M
  • 10月 | 407.20M
  • 3月 | 402.50M
  • 4月 | 402.16M
  • 5月 | 394.28M
  • 1月 | 393.07M
  • 11月 | 387.57M

この結果、以下の傾向が見て取れます:

  • 8月・12月は視聴時間が大きい
  • 次いで6月が大きい
  • 1月・5月・11月は視聴時間が小さい

漠然とこの結果は直観に合致するでしょうか?8月・12月に視聴時間が大きいのは日本では夏休み・冬休み、いわゆる盆正月があるため納得できるでしょう。
 しかしその法則で言えば、祝日がない “休無月” と呼ばれる6月が次に大きいのは不思議です。同様に、GWが存在する5月が小さいのは一見受け入れられません。
 厳密に確かめるため統計検定を行いました。One-way ANOVA を行ったところ、各月の間には有意な差が認められました( F(11, 1448) = 1.94, p < 0.05 )。ただし効果量の指標として ω² を計算したところ、ω² = 0.007 であり、非常に小さい結果でした。
 また、個別に月同士の差を見るため Bonferroni 補正済み t検定(Welchのt検定)を行ったところ、有意差があるペアは9つでした(全体66ペア)。特に、** 以上の有意度が認められた組み合わせは以下の通りでした(括弧内は視聴時間の差分と有意度):

  • 8月 > 11月 (+36.4M *** )
  • 12月 > 11月 ( +35.7M ** )
  • 8月 > 1月 ( +30.9M ** )
  • 8月 > 5月 ( +29.6M ** )
  • [次点・参考]12月 > 1月 ( +30.2M * )

この結果を受けて、たしかに月ごとに視聴時間には統計的有意差があるとは言えます。しかし、効果量ω² を見ると実質的な差はないとも言えます。日本全体の視聴時間について月による差は0.7%ほどに留まるからです。
 大きな有意差がある月は{8月・12月}に対して{1月・5月・11月}だけとも言えます。すると月ごとの有意差はたしかに存在しますが、それほど顕著ではないということです。
 これだけでは、先ほど確認した「8月・12月は視聴時間が大きいのに5月は小さい」という謎を説明できるほどではありません。この謎を「GW盆正月のパラドクス」とでも呼び、引き続き検証しましょう。

GW盆正月

それでは「GW盆正月のパラドクス」に踏み込むためにより細かい区間に注目してみましょう。最初の折れ線グラフからも見えるように、日本の三大休暇:GW・お盆・年末年始 は視聴時間が大きくなります。実際よく人気ストリーマーも「GWや夏休みは視聴者が増えるから頑張ってライブ配信しないと」という発言をすることがあります。これらの区間はどれほど効果があるでしょう?
 日付に関して、GWは 4/29 ~ 5/5 でほぼ固定であり、年末年始は 12/29 ~ 1/3 で固定です。一方のお盆は8/15前後であまり厳密には規定されていませんが、ここでは恣意的に 8/11 ~ 8/16 とします。(8月の1日あたり視聴時間が400 M[分]程度に対し、450 Mを超える期間を選びました。)
 これを受けて、お盆・年末年始・GWという細かい区間に区切って視聴時間を比較した結果は以下です:

  • 1日平均視聴時間(4年平均)[分]
  • GW (4/29-5/5, 7日間) : 438.56M
  • お盆 (8/11-16, 6日間) : 493.10M
  • 年末年始 (12/29-1/3, 6日間) : 463.29M

まずお盆・年末年始・GWは視聴時間が大きい傾向がありました。中でもお盆 > 年末年始 > GWの順に大きいです。あらゆる月の平均よりも大きいです。日別で見ても、大晦日の視聴時間(= 538.44M)が最大であり、次いで 8/12(= 537.55M), 8/11(= 528.44M)が並びました。
 ただし、はじめの折れ線グラフからも見えるとおり、これら三大休暇の視聴時間は絶対的ではないです。各年ごとに、GWの平均視聴時間を超える日は100日前後存在します。特に2024年・2025年に関しては、年間視聴時間ランキング(日別)Top10に三大休暇の日付は一つもランクインしません。ただ単に三大休暇はまとまって比較的大きな視聴時間が得られるというだけです。
 これを鑑みると、8月・12月の視聴時間は大きいのに5月の視聴時間が小さいこと(= GW盆正月のパラドクス)の説明がつきます。8月・12月の視聴時間はお盆・年末年始があるからだけでなく、夏休み・冬休みの漫然とした効果があるから大きいのである、ということです。対照的に5月は「GW以外の平均視聴時間」が小さめであるため、月全体の平均視聴時間は小さくなります。
 それを認めるにしても「5月のGW以外の平均視聴時間」は異様なまでに小さいです(= 383.81M)。どの月の平均視聴時間をも下回ります。原因は不明ですが、なにか五月病と呼ばれる神話は実在するのではないか?とさえ疑えます。

■ 時間

月に盛り上がりの波があるように、曜日や時刻にも波が存在します。今回はそれを確かめるために、以下の条件でデータを取得しました:

  • 日本国内のゲーム実況ライブ配信(YouTube, Twitch)
  • 全てのチャンネルの同時視聴者数の合計
  • 1時間単位で記録

以下のグラフは、このデータを用いて時刻に対して合計同時視聴者数を色で表現したものです:


[国内ゲームカテゴリライブ配信での合計同時視聴者数と曜日・時刻による推移]


このグラフは色の濃淡から視聴者数の大小を見ることができます(濃いほうが多い)。まず時刻の傾向に注目します。視聴者は夜に多い(主に21時〜1時ごろ)ことが言えます。これは皆様の直観に合致するでしょう。基本的には23-24時が多いです。
 また、曜日の傾向も見ることができます。週末である土日(両端)に視聴者が多いのは当然だと思います。一方で七曜日で最も視聴者が夜に少ないのは月曜日です。
 意外なのは水曜日の存在です。水曜日の夜は非常に視聴者が多く、他の平日や土曜日を凌駕し、日曜日に匹敵する視聴者数が出ています。

■ さいごに

これらから言えることは、月・曜日・時刻には一定の差があるということです。ならば「8月・水曜日は頑張って配信しよう!」ということになるでしょうか?これは必ずしもそうとは言えません。以下の条件があるからです:

  • 月による視聴時間変動は全体の0.7%ほどであることが今回証明され、ほとんどのストリーマーが気にするほどの数字ではない
  • これは全体の統計であって、自分のチャンネルに適用できるとは限らない
  • 8月や水曜日にライブ配信を行っているチャンネルが多い可能性もあり、単位チャンネルあたりの視聴者数は薄まる可能性もある
  • 時期によって増える視聴者が、自分のところに来るとは限らない(= 有名な大人気チャンネルに集中する可能性が大いにある)

これらを証明するにはより調査が必要です。結局今のところは時期に頼るのではなく、「各自のチャンネルでスケジュールを視聴者と対話しましょう」と申し上げています。
 この統計からは、平均や相関関係を述べることができますが、原因を突き詰めることはできません。このデータの存在自体がどなたかの研究の引き金になりましたら理想的です。

■ SCOPコラムとは

SCOP運営から情報発信する一環です。SCOPがどのような理念の上にあるのか、それを裏付ける証拠は何なのか等を発信します。特に世の中に在る問題を解決し、多くのライブ配信クリエイター:ストリーマーを助けるものを届けたいと考えています。


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